船越（岩手県下閉伊郡山田町）
船越
現・岩手県下閉伊郡山田町（1896-船越村／1955-山田町）
区域：第3区（沈水海岸）
湾形：乙類第四（湾内V字）
明治三陸津波（1896）
波高：6.58m* *6.58m（C1934）
死者：1250人（船越村）
流失倒壊戸数：104戸（同上）
再生形態：集団移動
「古へ善知識の巡錫するあり、高地居住の安全なるを説き勸めたる結果、高地に移轉するものあり、殊に明治29年波高6.6mの津浪を被り、家屋の流失、倒壞面積30000坪に及び、部落殆ど全滅に歸するや、高地移轉の必要を痛感し、全部落自發的に且つ自力を以て、現部落地に移轉し、街衢整然たるものあり」（C1934）
「津浪は5m内外の波高でも容易に對岸に越すので、南の船越湾頭にあった舊船越部落が29年に約400戸流失、1000人以上の死者を生じたのも當然であった。」（Y1943／p.66）
「最初は全滅した船越、田ノ濱をこの機会に合併して、略略中間なる海蔵寺より現在の國民學校附近に至る山麓に、移轉地域を設定しようとする意見が出た。然し結局兩村の意見は合致せずに夫々別個な地域を選定する事になった。船越ではその際先の役の行者の伝説等も出て、原位置の須賀に居てはこの様な事を幾度も繰返す事になると、當時の區長が中心となり、自己所有の畑地を一段40圓位で村民に分ち、地峡低地部の略略中央西部山腹に、120戸分の宅地を設定、低地にあった道路を山腹に上げ、其の兩側に集團移動を完了した。」(Y1943／p.70)
「明治29年の移動の行われた村々は、何れも私財を投じてまで移動を断行しようとする程の熱意ある1、2の先覺者を持ったものに限られる。何時の世にもかかる人の問題が自然的諸條件をよく克服しているのを知るのである。ここにはその2、3の例を引用したに過ぎないが、唐丹村本郷の山崎鶴松氏、同小白濱の山崎善造、小野富十郎、磯島富衛門の3氏、吉濱村本郷の新沼武佐衛門氏、船越村船越の佐々木興七氏、廣田村泊港の佐々木代三郎氏等を擧げることが出来、災害の救済に献身した人々と共に、此等の人々の顕彰も忘れてはならぬと思ふ。」（Y1943／p.138）
「明治29年に村の移動を實施した村々では、被害者は其の後の移入者、或は現地復帰者の一部に止まり、被害者のみが各自分散移動するやうになる。吉濱村本郷、船越村船越、唐桑村大澤の如きはその例に含まれている。」（Y1943／p.141）
「船越［山田町］では古くから低地居住の非を教えられた伝説が残つていた。明治29年には波高6.6mの津波で砂堆上の部落はほとんど壊滅した。その部落では自主的に高地移動の計画をたて、段丘上に敷地造成をして集団移動を実施した。」（K1961／p.68）
昭和三陸津波（1933)
波高：3.55m* *3.55m（C1934）
死者：3人* *2人（C1934）
流失倒壊戸数：* *24戸（C1934）
家屋流失倒壊区域（坪）：* *1.98ha（C1934）
浸水家屋：24戸
再生形態：
移動戸数：
達成面積（坪）：
「昭和8年津浪に於ては勿論殆ど災害を被らず。」（C1934）
「移動後の移入者や、分家等の海濱に移住していた24戸に被害があったのみであった。」（Y1943／p.71）
「再び流失した船越の一部も今度こそは原地に戻らぬ覚悟で、山ノ内部落のある臺地上に、眞新しい家屋を建てて移り住んでいる。」（Y1943／p.71）
「昭和8年の津波は3.5mであつたが、高地移動村落は被害をまぬがれた。しかし、低地の新しい居住者は流失倒壊24戸、死者2人の被害を受けた。」（K1961／p.68）
チリ地震津波（1960）
fig.船越：1933津波後の航空写真（C1934）
fig.船越：1933津波後の復興計画（C1934）
fig.船越：1933津波の集落移動位置と遡上範囲（Y1943）
fig.船越：1947航空写真（国土地理院）
fig.船越：1977航空写真（国土情報ウェブマッピングシステム）
fig.船越：2011津波遡上範囲（日本地理学会 津波被災マップ［速報］）
