湾形の分類

湾形の分類
海岸線の形状、海底の深さ、津波の被害状況から以下のように湾形を分類し、その被害との関係を示している。この湾形の分類は山口弥一郎の記録でも採用されている。

以下、湾形の分類(C1934)より。

甲類 直接外洋に向へる灣

  • 第一(外洋V字):灣形V字をなせる場合 津浪は灣奥に於て10米乃至30米の高さに達し、汀線に於ては一層勢を増して浪を更に高處に打上ぐるを通常とす。綾里灣、古濱灣、姉吉、集、十五濱村荒等此部類に屬す。
  • 第二(外洋U字):灣形U字をなせる場合 津浪は前者に比較して稍輕きも高さ15米に達することあり。田老、久慈、小本、大谷等此部類に屬す、綾里湊は其變形と見るを得べし。
  • 第三(外洋凸凹少):海岸線に凸凹少き場合 津浪は其の高さ前記第二に近くして稍々低く12米に逹することあり。吉濱村千歳、赤崎村長崎、十五濱村大須等此部類に屬す。

乙類 大灣の内に在る港灣

  • 第四(湾内V字):港灣V宇形をなして大灣に開く場合 津浪は第一の形式を取るも波高稍々低く十五米に達することあり。船越山田の兩湾に連なれる船越、兩石灣に開ける兩石港、十五濱村相川等此部類に屬す。
  • 第五(湾内U字):港灣U字形をなして大灣に開く場合 津浪は第四に比較して一層低く、被高7〜8米に逹することあり。廣田灣に開ける泊、釜石灣に連れる釜石港、大槌灣に蓮なれる大槌港、追波灣に開ける船越灣等此部類に屬す。
  • 第六(湾内凸凹少):海岸線凸凹少き場合 津浪は第五に比して一層低く4〜5米に逹することあり、又破浪することなく單に水の増減を繰り返すに過ぎざる場合多し。山田灣内に於ける山田港、大船渡灣に於ける大船渡港等此部類に屬す。

丙類

  • 第七(細長く浅い湾):灣細長く且つ比較的に淺き場合 津浪は概して低く、波高漸く2〜3米に達す。氣仙沼灣此部類に屬し、女川灣之に近し。

丁類

  • 第八九十九里浜式砂浜):九十九里濱型砂濱 海岸直線に近く海底の傾斜比較的に緩にして、津浪は共の高さ4〜5米に達することあり。青森縣東海岸、宮城縣亘理郡沿岸等此部類に屬す。

港灣は其の形状深淺に從ひ以上の如く數種に分類し、各々の場合に相當する波高限度の概數を記載せるも灣側及び灣底の凸凹屈曲等の津浪に與ふる影響も亦決して輕視すべきにあらず、屈曲凸凹甚しきときは浪勢之に由つて減殺せらるるに至るべく、從て同型に屬する港灣に於ても其環境の如何によりて波高限度に多少の差違ありと知るべし。