浦浜（岩手県大船渡市三陸町越喜来）
浦浜
現・岩手県大船渡市三陸町越喜来（1889-越喜来村／1956-三陸村／1967-三陸町／2001-大船渡市）
区域：第3区（沈水海岸）
湾形：乙類第四（湾内V字）
明治三陸津波（1896）
波高：9.28m* *9.28m（C1934）
死者：430人（越喜来村）
流失倒壊戸数：118戸（同上）
再生形態：分散移動
「灣の東北隅にある杉ノ下の一画では全村殆んど移轉しなかったのに、5戸だけは北の山腹に移った。然し内1戸は残念にも仕事の関係とて7、8年にして原地へ戻り、再び災害に遭っている。」（Y1943／p.37）
「一夕の津浪にて、浦濱のみで約200人は死んでいたと言ふ。」（Y1943／p.42）
「津浪直後一部には村を移さうとする議が起り、數戸は随意に適地を求めて移ったのであるが、全く津浪は稀有なものであり、運命観の如くあきらめて、多くは原地に居据はってしまった。」（Y1943／p.42）
昭和三陸津波（1933）
波高：6.72m* *6.72m（C1934）
死者：19人
流失倒壊戸数：58戸
家屋流失倒壊区域（坪）：24899坪* *8.22ha（C1934）
浸水家屋：66戸
再生形態：分散移動
移動戸数：70戸
達成面積（坪）：3494坪
「集團移轉戸數70戸、造成敷地面積3494坪、浸水高明治29年9.28m、昭和8年6.72mにして敷地計畫高11m以上とす。」（C1934）
「昭和8年には21戸流失［越喜来村］し、愈々集團移動しようと計畫したが、越喜来村では浦濱のみが許可になり、崎濱も下甫嶺も成功せず、2、3戸は北の山等に上ったが、7、8戸は既に假屋と言ふには少々永久的な家屋を建てて住みついている。」（Y1943／p.36）
「濱近い1漁夫の語る所によれば、移転するに適当な土地がきたの畑にあったが、地主が負債の為担保に入れてあって払下が困難であったのだと言う。50坪とか100坪でもほしいと叫んだ人が罹災者側にあったが、地主が高価な事を言って譲ろうとしなかった。最初浦濱は坪5圓、崎濱は4圓、下甫嶺は3圓位と村会が定めたが成立せずに終わった。被害者は殆ど純漁夫で土地を所有してゐる者とてなく、どこまでも言い張る程の村の有力者もいない。流されて居所もないから、夫々元の屋敷に仮屋を建てる。地主も左程暮らしが楽と言うのではなく、幾何かの借財をもっていて、それを土地を譲る時罹災者になるべく負わせようとするので、相談が容易にまとまらぬのであると言う。」（Y1943／p.36）
「昭和8年再び杉ノ下の一部、平野の中央なる沖田、国民学校付近の一画を含めて、浦崎の流失戸数54戸に達し、19人の死者を出している。今度こそは集団的に移動を完了しようと，中央に道路を通し、山より樋で飲料水を補給し、37戸分の、聚落の後世には少々理想に近い程の敷地を造成したが、惜しむらくは海岸との距離が約600mも離れる事になった。これでは漁を主生業とする人々が移る事は容易ではない。造成当時は補助金を●へるから移ろうかと言った人々もあったが、補助金のみでは家屋まで建つ訳ではなく、当時でも尚1500圓程度のお金が入用であり、低利で借りるとしても、低い生活をしている漁夫には負担が重過ぎると感じられたらしい。特に国民学校を中心とした一帯は役場もあり、小さいながら越喜来村の一核心街をなしているので、（中略）大資本で商店や旅館等をしているものは、ここ4、5年では到底集団地に移って行けぬと言っている。漸く調査当時11戸移っていたが、もっと濱近く適地がえられなかったかの感を深くして視察した。余りに無理に、理想的集団移転地を考え過ぎた嫌はあったかも知れぬ。」（Y1943／p.37）
「海濱から600mも離れて集團移動地を設定したが、若干移動したのみで大半は現地に踏み止まっている。」（Y1943／p.145）
チリ地震津波（1960）
fig.浦浜：1933津波後の航空写真（C1934）
fig.浦浜：1933津波後の復興計画（C1934）
fig.浦浜：1947航空写真（国土地理院）
fig.浦浜：1977航空写真（国土情報ウェブマッピングシステム）
fig.浦浜：震災津波前の航空写真（日本地理学会 津波被災マップ）
fig.浦浜：2011津波遡上範囲（日本地理学会 津波被災マップ［速報］）
