雄勝（宮城県石巻市雄勝町）
雄勝
現・宮城県石巻市雄勝町（1889-十五浜村／1941-雄勝町／2005-石巻市）
区域：第4区（沈水海岸）
湾形：乙類第五（湾内U字）
明治三陸津波（1896）
波高：3.6m* *3.6m（C1934）
死者：31人
流失倒壊戸数：142戸
再生形態 ：
「本部落は雄勝灣に臨み、高なる山崖を背ひたる狭隘なる地に位し、縣道を挟み細長き帶状街衢をなす。明治29年津浪高滿潮面上3.6m、流失倒壞戸數119戸、死傷226人に達せしも、津浪災害豫防に關する全面的對策の講ぜられしものなく」（C1934）
「雄勝町は2m以下の低地に位置していたため、明治29年波高3.9m、流失倒壊119戸、死者32人に達した。」（K1961／p.71）
昭和三陸津波（1933)
波高：3.85m* *3.85m （C1934）
死者：7人* *9人（C1934）
流失倒壊戸数：195戸（船渡・雄勝）* *361戸（C1934）
家屋流失倒壌区域（坪）：13000坪
浸水家屋：533戸* *206戸（C1934）
再生形態 ：地区改正
移動戸数：226戸
達成面積（坪）：14395坪
「昭和8年津浪［浪高3.85m］に依り、流失倒壞361棟、浸水206棟、死亡9人を出せり。要移轉戸數226戸、本部落附近に之を收容し得る適當の地を選定し得ざるを以て、舊宅地を地上げし、敷地を造成す。雄勝灣は波高並に衝撃力共に比較的甚大ならざる灣形なるを以て、敷地計畫高昭和8年津浪高と同高とし現地盤より最大3.00mの地盤をなし、盛土法面は凡て石積とす。敷地造成面積15520坪、内道路、水路面積1125坪なり。」（C1934）
「雄勝部落の郵便局は明治29年津浪に鑑み、當時の地盤より4尺の地上をなせしも、昭和8年津浪の波高は之より更に4尺に及び被害を被れり。之は單に局部的の一小例に過ぎざるも、調査充分ならざる不徹底の豫防施設に安んずるは、無益なるを實證するものである。」（C1934）
「［雄勝浜］宮城縣に於て前掲縣令第二條第二項の規定に依り建築禁止區域を指定したる町村」（C1934）
「雄勝湾の両山腹よりはスレートを盛んに採掘し、雄勝に運んで細工してゐる。雄勝の如く、背後に山を負ひ、湾頭に市街地が発達すれば、他に移せば町の機能を消失して終ふから移動は不可能に近い。上雄勝、下雄勝は少々道路を浜より離した程度で、5尺ほど宅地を盛上げて、ほとんど原地に復興している。ただしも雄勝の一部と伊勢畑は3、40m海岸より引込んで、7尺位高く宅地を建設してゐたし、対岸の船地には納屋の外に、借家住ひの数戸もみえてゐたから、時日を経過して、災害の記憶も薄れ、永く居着くやうにならねばよいがとながめて通った。」（Y1943／p.16）
「［明治29年］被災後原地復興のため、昭和8年には波高3.85mで、流失倒壊361戸、死者9人の被害を受けた。高地の宅地造成の適地がないので元屋敷を地上げして宅地造成を計った。すなわち、昭和8年の波高と同高とするため、低地地盤より最大3mの盛り土をして15520坪の宅地造成を実施して被災低地を住家建築禁止地区とした。しかし、非住家地区も次第に住宅地化され、とくに戦後は安易な低地は住宅地化が進んだ。」（K1961／p.71）
チリ地震津波（1960）
「チリ地震津波は約4mの波高で来襲したので、地盤上の住宅は無事であったが、低地上の建物は全壊及び流失87戸、半壊90戸、床上浸水191戸、の多きに達した。高地移動集落は被害をまぬかれたが、波長の短い三陸沖地震津波を想定すれば、低地とともに積極的防浪対策を必要とする。」（K1961／p.71）
「構造物主体の対策となったのではあるが、チリ地震津波を契機として地盤の嵩上げを行ったり土地利用規制を実施したところもある。嵩上げを実施したのは宮城県雄勝町、土地利用規制を定めたのは北海道浜中町と宮城県志津川町であった。」（C2010／p.170）
fig.雄勝：1961集落現状図（K1961）
fig.雄勝：1975航空写真（国土情報ウェブマッピングシステム）
fig.雄勝：震災津波前の航空写真（日本地理学会 津波被災マップ）
fig.雄勝：2011津波遡上範囲（日本地理学会 津波被災マップ［速報］）
